イランのコーラ
イランの映画監督アッバス・キアロスタミ監督の映画の中では「そして人生が続く」が一番好きです。イランでは1990年に大地震があり、この映画の前作「友達のうちはどこ?」が撮影された現場もこの大地震が襲いました。「そして人生は続く」はキアロスタミが息子を連れて前作主演の少年達の消息を尋ねて被害地へ向かうという内容です。
この映画の最初のほうで、被災の為、店主のいない商店に残ったままのコーラでのどの渇きを癒し、主のいないこの店に料金を置いて行く場面がでてきます。キアロスタミの被災地に対する深い鎮魂を表すシーンと受け取ったのですが、同時に「イランにコーラ?」と思いました。
「イランにコーラ?」はずっと気になっていたのですが、新潮新書の「イランはこれからどうなるのか」という本の第四章「嗚呼アメリカよ、もう一度・・・・・・」には、「テヘランのコカ・コーラ」というタイトルで、アメリカ文化の象徴であるコカ・コーラがイラン社会に浸透していることが書かれています。アメリカから”悪の枢軸”と呼ばれているイランですが、「実は、中東一の親米派?」というタイトルでは以下のような記述も。
「国民の大半は中東で最も親米的です。象徴的なのはアメリカを標的にした同時多発テロ(2001年)後の反応です。中東アラブ諸国では多くの人が歓喜しましたが。イランでは各地で市民がろうそくを灯して犠牲者を悼んだのです」
「イランはこれからどうなるのか」(春日孝之著)は現代イランの実像が解りやすく書かれています。イランと敵対しているイスラエルについて書かれた新潮新書の「イスラエル」(三井美奈著)とともに中東に興味のある人にお薦めの2書です。