本物のゴッホ
昨日、東京都美術館で開催されている『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』に行ってきました。
ある作品のところで後ろの方から(多分小さな)子供に説明する女性の声がします。
『本物のゴッホだよ』
「そんなストレートな表現で、周りにいる人もちょっと恥ずかしい」と思ったわけではなく、別の意味で『本物のゴッホ』に興味を持ったのです。
『本物のXXのXXはゴッホでなくっちゃね』と思った訳です。というのは以下。
世界でもっとも複製画をつくりだす村、中国・深圳(シンセン)市大芬(ダーフェン)村。2年程前に森アーツセンターのミュージアムショップでこの本を見てこの村の存在を知りました。
この本とは、「ゴッホ・オンデマンド -中国のアートとビジネス-」
Amazonの「内容(「BOOK」データベースより)」によると
世界でもっとも複製画をつくりだす村がある―中国・深〓(せん)市大芬村。10000人もの人びとが絵画を描き、世界中から絵を求めて人がやってくる。グローバリゼーションと消費社会、さらには芸術の意味や創造の価値といった大きな問題を、世界一の複製画の村を仔細にフィードワークしてあきらかにしようとする新しい芸術論。
参考:ブック・アサヒ・コムの「ゴッホ・オンデマンド」の中村和恵さんによる書評
この書評を読むとちょっと読みたくなりますが、398頁もある本なのです。
2016年末から2017年にかけて開催された「クラーナハ展―500年後の誘惑」へ行かれた方なら、展示室の壁一面を占めるイランのアーティスト、レイラ・パズーキによる『ルカス・クラーナハ(父)《正義の愚意》1537年による絵画コンペティション》』(パズーキが、2011年に中国・深圳の芸術家村で100人の芸術家たちにクラーナハの《正義の愚意》を模写させ、それを集めてひとつの作品にしたもの)で大芬村の複製画に出逢っています。
参考:発見!身近なアート探訪 日本初の大回顧展 「クラーナハ展―500年後の誘惑」
クラーナハ好きの私なのですが、この「クラーナハ展―500年後の誘惑」に合わせた読んだ本で、クラーナハの作品の多くはクラーナハ(親子)が個人で作成したものでは無くクラーナハの工房で作成されたものだということを(恥ずかしながら)知りました。
クラーナハの工房システムを知らなかった頃の私の投稿:ルーカス・クラナッハのユディット
パズーキの作品も中国の模倣文化を揶揄しているではなく、このクラーナハの工房システムを踏まえた作品なのです。
という事で、『本物のXXのXXはゴッホでなくっちゃね』という事なのです。
ところで、本物・偽物という事で言えば、最新の芸術新潮(2018年1月号)の特集が「世にも奇妙な贋作事件簿」なのですよね。