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このブログの「イランのコーラ」の冒頭で

イランの映画監督アッバス・キアロスタミ監督の映画の中では「そして人生が続く」が一番好きです。イランでは1990年に大地震があり、この映画の前作 「友達のうちはどこ?」が撮影された現場もこの大地震が襲いました。「そして人生は続く」はキアロスタミが息子を連れて前作主演の少年達の消息を尋ねて被 害地へ向かうという内容です。

と書きましたが、1990年のイランの大地震についてはどの位の人がご存知でしょうか? この地震で4万人以上が亡くなられたと言われています。1990年に生まれていない方や中学生以下だった方は知らなくて当然でしょうが、私自身は「そして人生は続く」を見て、この地震のことを知ったのです。

この映画の冒頭で被災地に向かうキアロスタミと息子の間で「地震の時に何をしていた」、「テレビでワールドカップを見ていた」、「どこの試合だった」、「スコットランドとブラジル」というような内容の会話をやりとりするシーンがあります。地震が起きたのはW杯イタリア大会期間中の1990年6月20日なのです。私自身はちょうどこの時期ちょっと長めの海外研修でアメリカ西海岸のサンノゼ付近に滞在していました。アメリカ滞在中にこの地震のことを報じたTV放送を見てないのです。アメリカとイランの関係のせいでアメリカでの報道が少なかったのでしょうか。日本に戻ってからもこの地震に関する新聞記事とかは少なかったのでしょうか。インターネット普及前の時代で、TVや新聞の報道を漫然と受け取っていた私ですから、愚かにもこの大地震のことを知らなかったのです。

それでは現在はどうでしょう。インターネットも普及し、中東関係の情報を入手する手段も増えているとはいえ、やはりTVや新聞の西側の眼から見た報道から情報を得、判断をしている点はあまり変わっていないように思うのです。

この映画では、地震の後にも関わらず、ワールドッカップを見るために自分でTVアンテナを取り付けようとする現地の人のシーンも出てきます。この映画についての論評・感想でこのシーンについて語っている人は多くいます。サッカー好きの方にとっては、こんな大地震の後でも見ないではいられないサッカーの魅力あるいはイラン人のサッカー好きに思いを馳せるかもしれません。

私もそういうサッカー好きの思いは共有しますが、私にとっては「この地震について何も知らなかった」ということがきっかけでいろいろのことを考えさせられたと言う意味で重要な映画なのです。